重病だったり大怪我を負ったりして苦しんでいる人に対して、思わず手を差し伸べたくなる。看護師の本質はそんな慈愛の感情が湧き起こって動く感情労働だ。そんな看護師にとって避けては通れないのが患者の「死」だ。特にホスピスや緩和ケアなどに勤める看護師にとって「ターミナルケア(終末期ケア)」は必ず向き合わなければならない。
人を助けるために看護師になったという人が多い上、看護学校でも「死を避ける」ということを重点的に学ぶ。そのため、なかなかホスピスや緩和ケアを希望する看護師は少ないのかもしれない。しかし最近では、ターミナルケアについての授業を行う学校は少なくないようだ。
看護師としてあるべき姿「看護観」というものは、看護師一人ひとりによっても患者一人ひとりによっても異なるだろう。しかし、根本的に1つだけ共通する思いがある。それは、「患者のためにケアを行う」ということではないだろうか。患者にケアを実践する上で、「相手が望む看護・自分が行いたい看護とはどういうものなのか」を見つめ直せすことが大事である。死期が迫る患者が残りの時間をどう過ごせば満足した最期を迎えられるのかを一緒に考えることは、看護師としても多くのやりがいに繋がるのだ。また、ホスピスや緩和ケアには正解がない。患者とその家族の数だけ人生があり、求めているものも異なるためである。残された時間をどう使うかを医療の視点から一緒に考えていくことが大事な使命だ。
ケースバイケースでその人の人生に寄り添えるのが、ホスピスに勤める看護師にとっての大きな魅力といえるだろう。